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あたしの赤ちゃんはどこ!

アトリエから見える軒下の、靴を干すハンガーにいつの間にか花瓶をひっくり返したような蜂の巣ができていた。こんな不安定な場所に、どうして作ったのだろう。ハンガーごと移動されちゃうのに。

 大きな蜂が、せっせと通い、唾液と土を混ぜて、巣を作っている。運ぶ土によって、色が変わって、きれいな層になっている。今、ちょうど一匹入れるような細長い口を作っている。せっせと作る様子を、家族たちと眺めて、すごいねえ、きれいだねえ。一生懸命だね、陶芸の手び練みたいだね、とみんなで感心する。もし、一匹でこの夏を過ごすのならば、このままにしておこうかと思う。

 以前、引っ越ししたての頃、玄関の天井に作られて、驚き、蜂の巣バスターに頼んで、駆除してもらった。(5000円もした)

その次は、近所の人に「蜂の巣ジョット」というのがいいよと言われ、毒を浴びせて殺してしまった。そのとき、壊されて転がった蜂の巣の中に、卵が各部屋ごとに入っていたのを見た。

蜂の巣とみると、すぐに危険だとおもい、駆除することを反省した。もっとちゃんと生態を調べてみて、共存できるならば、しようと思った。

今回、トックリ型なので、トックリ蜂かと思っていたが、調べてみたら、どうも違う。

ネットで調べてみて、「コガタスズメバチ」と判明。ええ!スズメバチ!

女王蜂が一人で巣つくりしている時が、花瓶のような形。やがて、働き蜂が孵化すると、周りにぼこぼこ小部屋を作っていって、いわゆるスズメバチの巣になっていくという。攻撃性は少ないが、巣をあらされたり、近ずくと襲うという。

 さあて、困った。じっと眺めていると、ぶんーと、女王蜂が出ていった。

今、巣は留守のはず。まだ働き蜂はかえっていないから、駆除するなら今のうち。

「ごめんなさい」と手を合わせて、そっとハンガーごと持ち出して、裏庭にほおる。パランと割れて、中にやはり数個の卵が入った巣がある。それを、裏山に投げる。入口のきれいな造形部分は、拾って、持ち帰る。

 やがて、元あった場所に、女王蜂が帰ってきた。

「ない!ない!巣がない!あたしの赤ちゃん!どこなのよ!」

とパニック状態で、ぶんぶん飛び回る。

なんども外へ行き、戻ってきて、軒下の床から天井まで。何度も何度も。

アトリエからみているうちに、女王蜂の悲鳴がわが身に迫り、涙がはらはら落ちてきた。

本当にごめんなさい。人間とエゴだけど、共存するには、仕方ないの。

あなたたちにさされると、我が家の子どもたちも大変になるのよ。許してね。

どこか、別のところで、もう一度、一からまた大変だろうけど巣を作ってくださいね。

 先日、水沢の保育園に講演会の仕事へ行ったとき、たくさんの0歳児から5歳児までの子供たちが預けられていた。親子参観日だったので、親子で楽しそうに工作をしていた。

 山上憶良の「銀も金も玉もなにより子宝が一番」という万葉歌を思い出した。

講演会では、親として、子どもの成長過程をいっしょに喜び、楽しみましょうというお話を絵本や素話を紹介しながらお話をした。

 そのこともあって、今日の女王蜂の悲鳴は本当に切ない。

学校から帰ってきた子どもたちに、蜂の巣の一部を見せながら、今日の顛末を話す。

11歳の息子の目に、大粒の涙があふれて落ちた。 

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